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毛利甚八さんの「にたあ」

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毛利さんが亡くなった。

毛利さんは、僕より、少しだけ年長。

少年院でのご縁があり、その研究会で、杉乃井ホテルで同部屋だったことがある。
棚湯につかりながら、その頃、社会を沸騰させた「裁判員制度」について、生意気にも論じさせてもらった。
「家裁の人」を書かれた毛利さんは、その方面の研究をされていて、すごいなあと思わされた。
裁判官だけの力より、ごく一般の人の常識を信じる方が、より効果がある。
そんな考えを聞いた。

真剣な顔と笑顔とのその高度差がすごく、そこが魅力的な方だった。

日本には3つ素敵な場所があります。
その一つが、豊後高田なんです。だから越してきたんです。
そうも、話していた。

杉乃井の窓から、別府を見渡し、進駐軍の話をしてくれた。
僕は別府生まれなのに、知らないことが、たくさんあった。
何にでも、詳しいのだなあと感心させられた。
漫画の原作という仕事、その苦労、難しさ。
真剣に語ってくれた。

なにより、こんな僕に、なんて一生懸命に話してくれるんだろうと不思議にさえ思った。

毛利さんは、罪を犯してしまった少年達にウクレレを教えていた。
ウクレレのなんたるかを知らぬ僕にも、一生懸命に教えてくれた。
「簡単ですよ。ウクレレって、ギターと同じですよ。」
そう言って、にたあと笑うのである。
まさしく、にたあであった。
この「にたあ」なら、少年達もウクレレ好きになるだろうなあと思った。
犯罪を犯した少年達へのまなざしは、僕の一億倍やさしかった。

戦いながら、安らかな方だった。

だから、きっと、亡くなった今も安らかなのだと思う。

僕は、あんなに戦えないし、安らかに生きることも出来ない。
そして、一億倍やさしくなれない。だから、すごい人だなあ、と思う。

せめて、今日くらいは、あの「にたあ」を真似したいと思う。

でも、明日はきっと出来ない。

情けないけれど、それが、僕の哀悼の意です。

毛利さん、すごいなあ。



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